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 3つの雇用管理モデルができました!
-平成20年度「介護分野における雇用管理モデル共同事業」報告-

 当センターは、介護労働者の雇用管理改善を通じて、雇用の安定と能力の育成等に資することを目的に、「介護分野における雇用管理モデル共同事業」を行いました。
 この事業は、当センターと介護事業所のユニットが共同して、雇用管理改善のテーマを設定し、外部専門家と共に改善モデルをつくるものです。

 実施に当たっては、地域を限定して広く一般に呼びかけました。その結果選ばれたのが、下表の3つの事業テーマです。
詳細より目的、取組内容、報告書内容をご覧いただけます。みなさまの事業場の雇用改善のヒントにしていただき、積極的な取組みを進めていただければ幸いです。

平成20年度実施「介護分野における雇用管理モデル共同事業」


雇用管理モデル共同事業3事例一覧
1.「介護老人保健施設における介護職員 
キャリアアップシステムの確立」
主な取組内容
社団法人全国老人保健施設協会(東京)
 
【外部専門家】
東京大学社会科学研究所特任准教授 堀田聰子
高橋人事労務管理事務所所長 高橋壽雄
株式会社社会保険研究所
社会保険旬報編集部長 谷野浩太郎
・介護老人保健施設におけるキャリアアッ プシステムの確立

・キャリアアップシステム導入のための標準マニュアルの作成

・職能基準、キャリアと資格及びそれに対応する能力開発体系、人事考課制度のモデルの提示

・法令遵守項目の提示

○取組みの詳細
2.「指定訪問介護サービスにおけるサービス提供責任者の役割意識 と職務スキルの開発」 主な取組内容
株式会社やさしい手(東京)
株式会社やさしい手甲府八王子事業所(東京)

【外部専門家】
東京大学社会科学研究所特任准教授 堀田聰子
マネジメント・デザインズ株式会社
コンサルタント リサーチディレクター 菅野雅子
株式会社リードクリエイトプランナー 角美寛
株式会社リードクリエイト
コンサルタント 清家三佳子
・サービス提供責任者の業務

・職務を遂行する 上での問題点の整理

・職務スキルを向上させるための課題の絞り込み

・役割、職務の内容基準の作成(エリアマネジャー、サ責リーダー、サ責の3区分ごと)

・職務役割基準による目標管理のあり方

・教育プログラムの作成

○取組みの詳細
3.「老人福祉施設における介護労働者の人材育成と組織マネジメント に関する課題と取り組みの実践」 主な取組内容
特別養護老人ホーム花みづき寮、サザン小川、ホームセラヴィ、菜の花館、悠ゆう、シリ ウスによるユニット(群馬)

【外部専門家】
特定非営利活動法人Uビジョン研究所
理事長 本間郁子
日本社会事業大学
社会事業研究所研究員 東畠弘子
・特養老人ホームにお ける職員階層ごとのヒヤリング及び実態調査の実施

・施設の職員研修及び受講者へのアンケート調査の実施

・調査結果を踏まえた今後の課題と取組みの具体的な方向性の検討

○取組みの詳細



各実施事業概要


1.「介護老人保健施設における介護職員キャリアアップシステムの確立」

<(社)全国老人保健施設協会(東京)との共同事業>

目的

介護老人保健施設においては、ここ数年新卒者の採用が難しくなり、中途採用を含め、より多様な分野からさまざまな雇用形態で採用せざるを得ない状況になってきています。しかしながら、そのような変化に対応したキャリアアップシステムの構築が遅れているため、今回の取組みにより、標準化されたキャリアアップシステムのモデルを確立することとしました。

取組内容

検討会を開き、①介護職員が定着するための人材育成システムのあり方②経験を経る各段階で必要とされる知識・技術・資格、研修③施設内、施設外研修④法令遵守とその内容等の検討を行いました。

報告書

検討結果を「介護職員キャリアアップ導入マニュアル」としてとりまとめました。概要は次のとおりです。①「介護福祉資格」を標準として位置づけ、入職から介護福祉士の資格取得、さらにはその後のキャリアアップのモデルをつくりました②入職から管理職までの各段階を、「職能基準」、「人事・賃金制度」、「人材育成制度」、「人事考課制度」の各項目ごとに整理し、モデルとして示しました③職員の定着・育成を図るためには、法令を遵守し、雇用管理を適正に行うことが必要なことから、基本的な法令の項目を示しました④その他、施設外での研修機関の情報等を掲載しました。


【介護職員キャリアアップ導入マニュアル】

2.「指定訪問介護サービスにおけるサービス提供責任者の役割意識と職務スキルの開発」

<株式会社やさしい手(東京都)、株式会社やさしい手甲府八王子事業所(東京都)との共同事業>

目的

超高齢社会を迎え、訪問介護に対するニーズは高まっており、その中核を担うサービス提供責任者の役割はますます大きくなっています。ところが、サービス提供責任者の責務は、居宅サービス等の運営基準にて明記されていますが、現場では、資格要件と実際の必要とされるスキルのアンマッチが生じています。能力向上のための仕組がきちんと構築されていないことがその一因でもあります。このため、今回の共同事業は、サービス提供責任者の能力向上に資するようサービス提供責任者の役割と職務スキルの開発を行うこととしたものです。

取組内容

サービス提供責任者を地域の単位で管理するエリアマネジャーへのヒヤリングの実施により、職務・役割の切り分け、問題点の把握を行った後、検討会を開き、①サービス提供責任者の役割、職務内容、行動レベルをエリアマネジャー、サービス提供責任者リーダー、一般サービス提供責任者の各階層ごとに整理②必要とする評価制度、研修体系、報酬制度の検討③教育プログラムの検討等を行いました。特に職務役割分担表、職務役割基準書の作成については、現場の意見を多角的に採り入れながら数度の具体的事例を参考に検討を加えました。

報告書

検討結果を報告書としてまとめ、別添資料として「職務役割基準書」、「役職階層ごとの役割の視点」、「職務役割分担表」、「教育プログラム」を添付しました。特に資料編は精緻な分析・検討による成果物となっており、他の事業所でも参考になるものと思われます。報告書の概要は次のとおりです。①訪問介護事業所を取り巻く環境(人件費の占める割合の多いための生産性の低さ、国の基準で決められた限られた報酬等の問題)②サービス提供責任者の解決すべき課題③新しい目標管理制度の導入(職務役割評価制度)と人事考課を取り入れるに当たっての、エリアマネジャー、サービス提供責任者リーダー、サービス提供責任者の役割概要と管理範囲④職務・役割基準による評価と報酬のあり方⑤昇給、降給制度を組み合わせた評価方法の試案⑥キャリアアップ計画(例)⑦職務役割基準及び評価制度導入スケジュール

【指定訪問介護サービスにおけるサービス提供責任者の役割意識と職務スキルの開発】

3.「老人福祉施設における介護労働者の人材育成と組織マネジメントに関する課題と取組みの実践」

<特別養護老人ホームサザン小川、特別養護老人ホームシリウス、特別養護老人ホームグリーントープ、特別養護老人ホームセラヴィ、特別養護老人ホーム菜の花館、特別養護老人ホーム悠ゆう、特別養護老人ホーム花みづき寮(いずれも群馬県)との共同事業>

目的

個室・ユニット型施設が増加していますが、ユニットによるサービスの質の格差が歴然として存在しているのが現状です。このような状況を生む理由を調査し、問題点の検討を行う中から、組織として、管理者としてどう対処したらいいのかを示す、いくつかのヒント、方向性を探りました。組織マネジメントのあり方と望まれる職員教育プログラムの開発が今回の共同事業の目的です。

取組内容

まず、外部専門家による次のような調査を実施し、その結果に基づく検討・分析を行いました。①「提出書類(事業報告書、事業計画書)審査」②施設長及び事務長を対象とした「基本情報(入居者の要介護度、職員数、研修回数等)調査」③施設長及び施設経営者を対象にした「経営者(組織マネジメントの支援方法、経営者の考え方等)調査」④中間管理職(経験年数、保有資格、研修の参加等)調査⑤一般職員(経験年数、保有資格、研修の参加等)調査⑥教育プログラム実施後の中間管理職を対象としたアンケート調査

報告書

検討結果を報告書としてとりまとめ、別添資料として6つの調査内容を添付しています。調査内容の概要は次のようなものです。①教育研修について、施設間のバラツキがある上、体系的に実施している施設は少ない②入職率・定着率について、設立して3年までは職員の入れ替えが激しく、また経営方針の変更に伴う離職があるなどの傾向がある③一般職員にリーダーになりたくない者が多く、中間管理職の労働環境の悪さがその原因となっており、支援策が必要なこと④法人を設立して3年未満の施設が4カ所あり、雇用管理について試行錯誤している姿がみられ、相談したり、支援する機関を整える必要がある。 具体的な提言として、「組織マネジメントに必要な取組み事項」(社会福祉法人の社会的な役割の認識、中・長期計画の策定、理念の明示・目標の設定、他15項目)、「事業計画、事業報告の作り方」、「職員教育プログラムの内容(新任、中途採用、中間管理職)」、「研修マニュアル」を示しました。

【個室・ユニット型施設における組織マネジメントと職員教育プログラム】

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