このページでは財団法人介護労働安定センター(英語名:Care Work Foundation【略称CWF】)の活動を紹介しています。
【ニュース インデックス】
全国老人保健施設協会機関誌「老健」平成21年10月号に掲載された、「第20回全国介護老人保健施設大会 新潟」の「高齢者の尊厳を守る夢のある職場」と題する「パネルディスカッション」に、当センター新島理事長がパネリストとして参加しましたので、その内容を紹介させて頂きます。


私の基本的なスタンスは、雇用管理というものに焦点を当てて改善を図っていくことが、地道ではあるが、介護現場の改善のための有効な方法になるのではないかということだ。
「介護労働実態調査から見た実態」として、要介護の方が増えているなかで、なかなか介護人材が追いついていかない。一番大きいのは「高い離職率と低い定着率」ということに尽きる。当センターの19年度実態調査では、21.6%の離職率で、全産業の約15%と比べてかなり高い。
さらに施設系で25.3%の離職率であるから、4年経つと職員が全部入れ替わるということになる。施設で辞める方のうち、1年未満で辞める方が約3割。賃金が低いからという理由があるが、賃金の低さだけが高い離職率の原因ではないだろう。
「介護職の三大不満」は、1つ目には仕事の割には賃金が低い、従って将来設計ができないということ。
2つ目は日々の仕事のなかで緊張を強いられる業務ストレスがあり、精神的にきついということ。3つ目は業務に対する社会的評価が相対的に低いのではないかということである。
特に介護労働の現場では約8割を女性が支えているという実態がある。平均年齢は43.8歳で、特に訪問系では50歳以上が過半数を占める。正規・非正規で見ると、非正規雇用の比率が46.7%の職場である。
全産業では3分の1程度であるため、格段に高いという状況だ。
介護全体の賃金水準は月額約21.5万円だ。全産業の男性では33万円強だから、3分の2程度の水準になる。
一方、悪いことばかりではなく、仕事を通じて満足度の調査をすると、「仕事にはやりがいを感じていて満足している」が多い。しかし、賃金、労働時間、福利厚生については不満度が高いという結果だ。
研修については、「研修が十分に行われていない」という実態がある。研修を受けていないという方が4割強いる。もう一つの問題は、採用された後、指導担当者がいないという回答も4割程度あり、入職した後の教育システムがかなり問題だ。
平成20年5月に「介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律」ができ、それを受けて、今年4月から介護報酬が3%アップし、負担の大きな業務への評価、専門性への評価、地域差への対応という3本の柱で改定がなされた。
こういった行政ベースの施策と並行して、必要とされるものは事業所レベルでの雇用管理の改善ではないだろうか。ポイントは、雇用管理責任者を選任し、この方を通じて魅力ある職場づくりをしていくということだ。しかし、雇用管理責任者の選任をしていない事業所が43%もある。さらに制度自体を知らないという事業所も13%近くある。
雇用管理改善の内容としては、介護関係の法令の枠内で、労働基準法や最低賃金法など労働関係の法令を遵守しながら、そこで働く方々の能力を十分に発揮することによって、その事業所が発展するということだ。その発展の成果を労働者の人事、処遇に反映させていくことを目的とした職員管理が、雇用管理の概念だ。
職場定着、あるいはモチベーションを高めるための方策は単なる法令遵守ということではなく、さらに職場を明るく、魅力あるものにし、職員の定着を促進するということだ。重要なのは、職場内のミーティングで、コミュニケーションを図っている職場には安定性があるということだ。
年配の方の指導、先輩職員の指導制であるプリセプターシップ、エルダー制がかなり効果があるのではないか。また能力評価、資格手当の支給、腰痛などの健康管理の問題、あるいはメンタルヘルスへの取り組みなどの重要性が挙げられている。
雇用管理改善の取り組みのなかで、これから特に必要とされるものが「研修」ではないだろうか。実は介護に自信が持てないという方も多いという状況で、特に認知症対応で、介護現場でのニーズが高度化し、サービス提供に必要とされる技能、知識が高度化、専門化している。
そのために事業主が、キャリア形成について従業員に対する意識啓発を図り、かつ体系的に研修の計画を立てて実施していくことが必要である。
施設系では、例えば介護福祉士等の有資格者に対するキャリアアップ研修、中間管理者層を対象としたマネジメント能力の向上研修が必要である。
いずれにしても、これから多様な人材が介護分野に入ってくるが、より多くの人に定着していただきたい。介護人材の質と量、両面にわたる関係者の地道な努力を積み重ねることによって、改善が図られていくのではないかと考えている。
平成21年10月6日、独立行政法人福祉医療機構(WAMNET)が主催した「特別養護老人ホーム経営セミナー【東京会場】において当センター新島理事長が「介護労働者のキャリア形成に関する研究会(中間報告)」について、各種実態調査の結果等も踏まえた新たな視点で講演いたしました。
◇発表時のレジュメは此方に掲載してます(pdf)
◇本研究会の報告書はこちらからご覧下さい。
本セミナーには、全国から特別養護老人ホームの
経営者など約300人が出席されました。
(会場:都市センターホテル・コスモスホール)
週刊東洋経済 2009.9.5では「有識者に問う介護保険制度のあるべき姿」「介護政策 私はこう考える」と題し、当センター新島理事長のInterviewコーナがありますので、ここに紹介させて頂きます。

介護職員の処遇改善に関する一連の政策は歓迎すべきものだ。ただ、実際の効果には疑問もある。4月の介護報酬3%改定は賃金引き上げ効果としては限定的だと思う。その後、2009年度補正予算で介護職員処遇改善交付金として、介護職員1人当たり月平均1.5万円の賃金引き上げ相当額が2.5年分予算計上された。これは直接の賃金助成の仕組みであり、効果は非常に大きい。しかし、2年半経過後、恒久的な制度として続けるかは決まっていない。いずれにしても、介護保険は将来、財源のあり方が大きな問題になるだろう。
年功システム確立が急務
先般の政府の経済対策では、介護人材の養成にも力が注がれている。介護分野では09年度に約2万6000人の離職者訓練を実施する計画が打出された。同計画は不況で仕事を失った人に対するもので、介護福祉士資格取得のための2年訓練コースの創設など、過去にない思い切った施策も含まれている。また、雇用保険の受給資格を持たない非正規労働者に対して、職業訓練期間中の生活費を給付する制度が設けられたことも今までにないものだ。
介護分野に焦点が当ったのは、07年の福祉人材確保指針の改定以来、質の高い介護人材確保のための取り組みが進められてきたという経緯があることとともに、失業者を雇用吸収力のある分野で引き受けなければならないという政策課題ゆえだ。高齢者が増え続ける中で介護分野の雇用吸収力は非常に大きい。
今後の20年間に、介護に従事する人材は現在の倍に当たる200万人以上が必要になる。問題は、若年労働力が減少していく中で増やしていかなければならないということにある。
そのためには、若年者以外の労働力の確保、および、若年者を含めて離職をいかに防ぎ、定着を進めていくかが重要だ。
介護の職場が抱える問題は①労働環境が悪い、②仕事がきつい、③社会的評価が低い、という3つの問題に尽きる。これらを変えていかなければ、いったん入職した人材も定着しない。人材確保のためには、労働関係法令の順守が重要だ。国の制度では、雇用管理責任者の設置に努めることになっているが、半数以上の介護事業所が置いていない。
能力や資格、経験に見合った年功制度システムの確立も必要だ。介護職場では初任給こそ他産業と遜色ないが、賃金がなかなか上がらない。そして年齢を重ねるほど格差が開いていく。ここを変えていかないと職員も将来の展望が開けない。
国として介護職員の処遇改善に取り組む際には、介護報酬や保険料、公費負担のあり方、被保険者の範囲の問題に踏み込まざるをえない。職員の処遇改善の問題は、このように介護保険制度のあり方と深くかかわっている。